家づくりに対する私の思い
数ある高気密・高断熱工法の中、なぜアリアはソーラーサーキットの家にこだわるのか?
なぜ、結露が起きてしまうのか?また結露が家にどういう影響を及ぼすのか?
家を建てる前に知ってほしい、私の家づくりに対する思いを
アリア建築工房を立ち上げた経緯とともにご紹介します。
かなりの長文となりますが、家づくりの事を真剣にご検討されている方は
最後までお読みいただけると幸いです。
アリアがソーラーサーキットにこだわるわけ
知られざる現代住宅と結露のたたかい
桃山時代から続く、大工の系譜
私の父親は大工として、多くの家づくりに携わっていました。
父の大工の稼業は古くは、安土桃山時代から続き、父が17代目で私が18代目であると聞いております。
当時の家づくりは、木造の柱や梁に土壁を施し、換気や採光の為に
間取りを工夫したり、大きな開口部を設けていたりしていたのを覚えています。その中でも印象的だったのが、大工である父が、直接現場でお客様とやり取りをしながら完成まで家づくりを行い、完成後も長きに渡り、お客様とのお付き合いがある事でした。(ありがたいことに、父のお客様の多くは現在もアリア建築工房とお付き合いをさせていただいております)
また、その当時子供ながらに「つくった家の維持管理は地域の工務店(大工である父)がやってるんだ」ということを感じていました。
高度経済成長で日本の家づくりにも変化が・・・
私が建設会社に就職した当時は高度経済成長のど真ん中でした。
当時はRC造のマンション現場の管理を任されていましたが、住宅の供給が急務なこの時代、父が行っていた家づくりとは少し違い
床・壁・屋根に断熱材を施し、内壁には合板や石膏ボードが使われ
極力安い材料で工期が短縮された家が好まれる風潮でした。
しかしそれと同時にシックハウス症候群や、結露によるカビ・ダニの問題が発生しはじめました。
それらの対策として、換気設備の導入がなされましたが、当時は第一種換気装置などは存在せず、キッチンやトイレ・浴室などから局所的に換気する為、結果として外の空気を家の中に入れてしまうこととなり、日本の風土に合った家づくりが行われていない事に疑問を持ちながら仕事をしていました。
住宅供給過多の中で発生した結露の問題
当時私が担当したRCマンションや住宅でも、結露の問題がないというわけではありません。
特に多かったのが、北側に面する部屋の結露によりカビが発生するという事例でした。
特に北面というのが厄介で、換気の為に自然給気口が設けてあっても、冬場はそこから冷気が入る為、住んでいる方は給気口にフタをしてしまったり、換気装置自体を止めてしまう方も多く
寒いことが理由で断熱性能向上の為の改修を施しても冷暖房の利用により、外との温度差が生じてしまい、壁体内結露が起こって結局カビが発生するという悪循環の繰り返しでした。
また、半地下のある住宅を担当した際、完成から半年後の梅雨の時期に大量のカビが発生してしまい、結果として地下にあったクローゼットの衣類などがほぼ全滅し、お客様に多大なるご迷惑をかけてしまいました。
これらの経験がきっかけとなり、湿気や結露の対策ができる工法を探求するようになりました。
ソーラーサーキットの家との出会い
家づくりに携わりたいという思いもあり、マンションビルダーの会社から、地元の工務店に転職することとなりました。
その工務店では、住宅事業にも携わる事ができ社内で積極的に工法の検討も行われていました。(実際に様々な工法を採用しながら、比較検討を行ってきました。)
その中で出会ったのが、「カネカ」が母体として推奨するソーラーサーキットの家でした。
それは今から20年以上も前の夏の話になりますが、ソーラーサーキットの工法で建てたモデルハウスに行った際、当時では考えられなかった小屋裏空間が全く暑くないということに、驚きを隠せませんでした。
その後社内で協議をした結果、ソーラーサーキットの家を採用することが決まりました。
やはり家づくりは大工が要
ソーラーサーキットの家の採用が決まってから、勉強会や研修を重ね
ソーラーサーキットの家の性能を向上させるには、設計(特に換気計画)と現場の施工精度が重要である事がわかりました。
私は主に現場管理を担当しておりましたので、現場で大工さんと断熱材の施工方法や気密性能を高める為の議論を重ねました。
通常の木造の家とはまったく異なる工法でしたので、現場では想定していたよりも時間を要します。特に断熱材をを施工する際は気密性能を確保しないといけない為、細心の注意を払いながら施工を行います。
その結果を得る為に、当時では珍しかった気密測定を導入し、期待していた数値以上のものが測定結果で出たときは、現場の大工さんたちと喜びをわかちあいました。
結露が起こらない理由
ソーラーサーキットの家を採用して以来、お問い合わせのあるお客様のニーズにも変化がありました。それまでと比べて、暑さ寒さ・結露に悩んでいるお客様からのお問合せが増えたのです。
ソーラーサーキットの家は、これまでの家と違い、完全外断熱工法で、高気密・高断熱でありながら換気や通気を上手に使い、構造体の内側と外側に2重の通気層を設ける工法です。また、当時ではこれまた珍しかったペアガラス+樹脂サッシがソーラーサーキット工法の標準でした。これらのことにより高気密高断熱の家の弱点である結露という心配がなくなりました。
実際に結露に悩まされていたお客様の家が完成し、住み心地だけではなく結露しないということに感激されているのを見て、今までの家づくりとは全く違うということを強く感じました。
ソーラーサーキットの家の専門部署を任されるが・・・
私はかつて父が現場でやっていたように、お客様と現場でじっくり打ち合わせに時間をかけて、家づくりを行いたいという思いがありました。
ソーラーサーキットの家は、設計の段階から、お客様と一緒に造り上げていく完全オーダーメイドの位置づけ為、私の考えにピッタリと当てはまります。
また、ソーラーサーキットの家を建てられるお客様も工期にとらわれず、じっくり家づくりを行いたいという方がほとんどでした。
しかし、会社としてはなるべく工期を短縮しないと思うような利益が上げられない為、考え方の違いにより対立する事もしばしばありました。
そんなある日のこと、会社としてとんでもない決断がなされました・・・
会社が他の工法の家づくりにシフトチェンジ
前述したように、ソーラーサーキットの家は完全外断熱の工法です。
ここでいう完全外断熱とは、外壁や屋根だけでなく、基礎の外側も断熱材を施す(以下、基礎外断熱と記す)ことで、いわば地面から上はすべて断熱材で覆われている状態です。この基礎外断熱を施せるというのは、現在でも家づくりにおいて1、2を争うほど重要なファクターで、当時はソーラーサーキットの家だけの専売特許でした。
その分手間もコストもかかりますが、コスト以上のパフォーマンスは十分に期待できます。
しかし、ある本の影響で「外断熱工法」という言葉に注目が集まり、ソーラーサーキットの家の工法の後にもいくつかの外断熱工法が誕生しました。
そしてそのことが悲劇をまねくこととなります。
なんと、会社が注文住宅事業としてソーラーサーキットの家の工法から他の外断熱工法に切り替えてしまったのです。
コストと現場のスピードを重視した為の決断で、先ほど述べた基礎外断熱もできなくなりました。
お客様の住み心地を最優先に考えていた私は、この決定に当然反対しますが聞き入れてもらえず、結果としてその会社を辞め
独立して会社を設立することにしました。
前途多難な独立。それでもソーラーサーキットの家づくりがやりたい
独立当初、家を建てたいというお客様はおらず、知り合いの方(特に地域ビルダー)の下請業などがほとんどでした。
ただ、やっぱり心の中ではソーラーサーキットの家をベースとしてお客様とじっくり腰を据えて行う家づくりがしたいという思いがありました。
思いと現実の葛藤の中独立してから2年、お客様や知人からのご紹介のおかげで経営状態も軌道に乗り、念願のソーラーサーキットの家の加盟店へ。
前の会社がソーラーサーキットの家づくりから撤退していたこともあり、以前お世話になったお客様をご訪問し、そこからメンテナンスの依頼や、新規のご紹介もいただけるようになりました。
築20年以上になる家の点検で・・・
現在アリア建築工房の定期点検は住設等の使い勝手や、内外部の劣化等の確認だけではなく、各居室の温度や湿度、換気風量や含水率などを測定し、そのデータに基づく住環境改善のアドバイスを実施しております。
それらの先駆けとしてはじめて築20年以上になるソーラーサーキットの家のお客様の点検にお伺いした時の事。
各お部屋の数値を測定させていただいた際、居室間の温度差湿度差がほとんどありません。しかも真夏にも関わらず、稼働しているエアコンは2階(正確にはロフト)の1台だけ。
新築ではなく20年以上も経過している家の性能が全く衰えていないどころか、20年前に体験したモデルハウスと変わらないことに衝撃を覚えたと同時に、この工法は間違いないという信念が確信に変わった瞬間でもありました。
湿度をコントロールする家づくり
お客様訪問や定期点検の計測でわかったことがもうひとつあります。
それは室内の湿度(ここでいう湿度は相対湿度の事)は
ある程度コントロールする事は可能だという事です。
特にリフレアと呼ばれる除湿システムが備わっている家は、梅雨時でも室内湿度がどの部屋も50%程度に保たれているのは驚きです。
だからこそ
・結露が起こらない
・家の骨組みを含めた木材が腐らない
・無垢材、自然素材との相性がいい
・部屋干しがしっかり乾く
などなど
湿度をコントロールできれば、こんなにも人にもそして家にも優しい家となります。
しかし、これは換気装置だけでは成立しません。
家にとって気密・断熱・換気のバランスが大切なのです。
前の会社も含め、今まで数ある家の工法を見て、学び、検討してきました。
正直、より性能の良い断熱材やサッシが存在する事は当然熟知しております。
ただし、それらの長所、短所を理解せず数値だけで採用するのは、まさに諸刃の剣です。
私がソーラーサーキットの家を採用するのは、気密、断熱、換気のバランスがよく、最も理にかなった(筋が通った)工法であるがゆえです。
家づくりの根底はお客様が納得する住み心地
私が、ソーラーサーキットにこだわり続ける理由
それは家族が安心な住環境で暮らせて、心身共に良い状態を維持できるウェルビーイングな家を提供できるからです。
住宅産業において、早さ安さが世の中的に重視されてから約45年が経ちます。
もちろん早さも安さもお客様にとっては大事な事ですが、現代の家づくりに求められているものは
家そのものの「質」ではないでしょうか?
今更結露の問題?と首をかしげる方もいらっしゃいますが、そんな結露で悩まされているのは
えてして、早さ安さの家に住まわれている方に相違ありません。
だからこそアリア建築工房は、湿気・結露で悩んでいる方にソーラーサーキットの家を強く勧めます。
また、かつて父がやっていたように、お客様と現場でじっくり話あって一歩ずつ丁寧に家づくりを行う事
古臭くて遠回りな手法かもしれませんが
これこそが、お客様が納得して家づくりを行う為の本来の姿なのではないかと思います。
400年前から続く古き伝統と現代社会に合った工法との融合をもって、次世代に贈る住み心地を提供し続けます。
長文を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
株式会社アリア建築工房 代表取締役 岡本 正
※ウェルビーイング(Well-being)とは:「よい(well)」と「状態(being)」を組み合わせた言葉で、心身ともに満たされた状態を意味します。